事業再構築補助金では、採択されたら交付申請を行い、その後事業を実施します。
補助金が交付されるということは、事業完了時にある程度の成長が見込まれていることが求められています。採択されるためには、事業計画書で成長の実現可能性を明確に示すことが重要です。
この記事では、事業再構築補助金の「成長性要件」とはどのような基準で判断するものなのか、詳しくご紹介します。
事業再構築補助金の事業実施について、自信がない方はぜひ参考にしてください。
Contents
事業再構築補助金の成長性要件とは?
事業再構築補助金を申請する際、今後実施する予定の事業では成長が見込まれることが必要条件とされます。そのため、事業再構築補助金を申請する方は、成長性について気になっている方が多くいらっしゃいます。
本記事においては、事業再構築補助金の成長性要件を「補助事業終了後までにどの程度の成長が求められるか」という軸で判断することとし、解説していきます。
事業再構築補助金の成長性要件一覧
事業再構築補助金における成長性とは、どのような点で判断できるのでしょうか。
主に、以下の項目の数値を事業を通じて引き上げることを条件としている場合が多いです。
- 付加価値額
- 従業員一人当たり付加価値額
- 売上高
- 従業員の増員
- 研究開発・技術開発の時間
- 人材育成の時間
申請枠によって求められる内容が異なったり、条件とされていなかったりするので、詳しくはそれぞれ後述いたします。
この中でも、特に気をつけたい2点について解説します。
付加価値額の年率平均とは
事業再構築補助金において、必須要件とされているものの一つとして、「付加価値額を向上させること」があります。
付加価値額とは、「利益」と同様の意味で用いられ、企業が事業活動を行う中で出した価値を数字として表したものです。営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
この付加価値額を向上させることが要件とされており、具体的には以下の数字を求められます。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させることが必要です。
事業再構築補助金の交付がされ、事業実施後にこの数字に到達しなかった場合であっても、基本的には補助金の返還まで求められることはありません。
ただし、事業計画書を提出する段階では、事業計画上達成が可能であると判断される必要があります。
従業員一人当たり付加価値額の年率平均とは
従業員一人当たりの付加価値額は、以下の式から算出します。
従業員一人当たりの付加価値額 = 付加価値額 ÷ 従業員数
この数字は、従業員一人に対してどの程度の付加価値を生み出せているかを判断する指標となります。
先述した通り、事業再構築補助金においては、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加することが必須要件とされていますが、枠によっては従業員一人当たりの付加価値額を同様に年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させることでも、要件を満たしていることとなります。
事業再構築補助金の枠ごとの成長性要件
ここからは、事業再構築補助金の枠ごとの成長性要件についてそれぞれ解説します。
なお、枠ごとの必須要件についての詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
成長枠
成長枠では上記の対象となる事業者に対して、最大7,000万円までの支援が行われます。なお、対象となる業種や業態は事務局で指定されます。
付加価値額 |
年率平均4.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
給与支給総額 | 事業終了後3~5年で年率平均2%以上増加 |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
卒業促進枠または大規模賃金引上促進枠に同時に応募可能です。
グリーン成長枠
グリーン成長枠は、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に支援を行います。
通常のグリーン成長枠である「スタンダード」に加え、要件を緩和した「エントリー」という類型が新たに創設されています。それぞれについて条件をご紹介します。
【エントリー】
付加価値額 | 年率平均4.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
給与支給総額 | 事業終了後3~5年で年率平均2%以上増加 |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 1年以上の研究開発・技術開発 ※人材育成の時間かどちらか一方を達成すること |
人材育成の時間 | 従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成 ※研究開発・技術開発の時間かどちらか一方を達成すること |
【スタンダード】
付加価値額 | 年率平均5.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
給与支給総額 | 事業終了後3~5年で年率平均2%以上増加 |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 2年以上の研究開発・技術開発 ※人材育成の時間かどちらか一方を達成すること |
人材育成の時間 | 従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成 ※研究開発・技術開発の時間かどちらか一方を達成すること |
成長枠と同様に、卒業促進枠または大規模賃金引上促進枠に同時に応募可能です。
卒業促進枠
卒業促進枠では、成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対し、補助金額を上乗せし支援を行います。
卒業促進枠の必須要件は、以下の通りです。
付加価値額 | 無 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
売上高 | 無 |
従業員の増員 |
成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること※以下のいずれかを達成すること |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
なお、大規模賃金引上促進枠との併用はできません。
大規模賃金引上促進枠
大規模賃金引上促進枠では、成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対して、補助金額を上乗せし支援を行います。
大規模賃金引上促進枠の必須要件は、以下の通りです。
付加価値額 | 無 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
事業場内最低賃金 | 補助事業の終了後3~5年の間に、年額45円以上の水準で引き上げる |
従業員の増員 | 補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年率平均1.5%以上(最低事業計画期間×1人の増員が必要)増員させる |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
なお、卒業促進枠との併用はできません。
産業構造転換枠
産業構造転換枠は、国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を対象として支援する類型です。
補助率を引き上げたり、対象経費に廃業費を追加し、廃業費がある場合は補助上限額を上乗せにしたりすることで、より重点的な支援を行います。
付加価値額 | 年率平均3.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
売上高 | 地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
物価高騰対策・回復再生応援枠
物価高騰対策・回復再生応援枠は、第9回公募までの「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」を統合し、第10回公募から追加された枠です。
付加価値額 | 年率平均3.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
売上高 | 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
なお、売上高の減少要件については、「付加価値額(売上高×1.5)減少」で代替できます。
最低賃金枠
最低賃金枠は、最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象とし支援を行う枠です。
付加価値額 | 付加価値額の年率平均3.0%以上増加 |
従業員の最低賃金 | 2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること |
売上高 | 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
サプライチェーン強靱化枠
サプライチェーン強靱化枠は、海外で製造する部品などの国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靭化や地域産業の活性化に取り組む事業者を支援する枠です。
付加価値額 | 付加価値額の年率平均5.0%以上増加 |
従業員一人当たり付加価値額 | 無 |
売上高 | 無 |
従業員の増員 | 無 |
研究開発・技術開発の時間 | 無 |
人材育成の時間 | 無 |
サプライチェーン強靭化枠については、今回紹介する条件は不要とされるものが多いです。しかし、その他にクリアすべき特別な要件が非常に多いため、申請される方は詳しくチェックしましょう。